砂ずりの藤

新緑の奈良公園に行って来ました。
当初は目的もなく、自由気ままに新緑を満喫しようと出かけましたが、この時期であれば「砂ずりの藤」を見ない手はないと一路、春日大社をめざして歩き出しました。
春日大社は知っての通り、鹿を神の使いとした奈良公園の中にある神社で、全国に数多くある春日神社の総本社です。
しかし、今回はいつもと違うルートで歩いていると前方に新緑に輝く、大きなクスノキが目に飛び込んできました。
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この木は遠くから見ると一本の巨樹に見えますが、実際は3本のクスノキで成り立ち、樹齢は約100年といわれています。
枝の大きさに合わせるように、まわりを柵で囲い大切に管理されています。
なぜならば、この木は明治41年に奈良県で行われた陸軍の大演習に際して、飛火野で催された饗宴に明治天皇が臨席され、その玉座跡に記念植樹された由緒正しいクスノキであるからです。
今は観光コースから少し離れていますので、この地を知っている地元の方が子供たちを連れて伸び伸びと遊べる絶好の場所となっています。

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春日大社・砂ずりの藤
この名前の由来は藤の花穂が1m以上垂れ下がり、地面の砂を擦るほど伸びるところからきています。
しかし、今年の藤の花穂は例年に比べると短かったようです。それとも、まだ伸びるのか?
もともと春日大社境内には藤の花が古来より自生していたらしく、この藤の木も樹齢700年以上ともいわれています。
その樹齢の根拠となっているのが、鎌倉時代に西園寺公衡や藤原一門、高階隆兼らが作成し奉納した春日権現記絵と呼ばれる絵巻に「砂ずりの藤」が登場しているからだそうです。
絵巻を見て「砂ずりの藤」と判断できるということは、実際にはもっと古来からあったものかもしれません。

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春日大社から若草山、東大寺方面へ新緑を仰ぎながら歩いていると、川を渡ったところに茅葺屋根の日本むかし話に出てきそうな茶屋があります。
この茶屋のまわりは新緑のもみじで囲まれていますので、紅葉の季節は一段と雰囲気を醸し出す被写体になってくれそうです。

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定番の奈良公園の鹿です

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新緑に映える東大寺大仏殿

澄み切った青空の下、新緑を満喫した一日でした。

by kimama-time | 2008-05-11 07:32 | Trackback | Comments(0)